1. はじめに
仮想通貨を売買するためには取引所が必要ですが、大きく分けて「国内取引所」と「海外取引所」の2種類があります。国内取引所は日本の金融庁に登録されており、日本円の入出金が可能でセキュリティ面も優れています。一方、海外取引所は豊富な通貨ペアや高度なトレード機能を提供しており、多くのトレーダーが利用しています。
しかし、海外取引所にはメリットだけでなくデメリットもあります。本記事では、海外取引所の特徴を整理し、国内取引所と比較しながら、その利点とリスクについて詳しく解説します。
2. 海外仮想通貨取引所とは?
国内取引所との違い
国内取引所と海外取引所の違いを理解することが重要です。以下の点で大きく異なります。
- 規制: 国内取引所は金融庁の監督下にあり、法令に準拠している。一方、海外取引所は各国の法律に基づいて運営されており、日本の法律には従わない。
- 取扱通貨: 国内取引所は取り扱う仮想通貨の種類が限られているが、海外取引所では数百種類以上のアルトコインが取引可能。
- レバレッジ取引: 国内取引所では最大2倍までのレバレッジ取引しか提供されていないが、海外取引所では最大100倍のレバレッジ取引が可能。
- 日本円の入出金: 国内取引所は銀行振込やクレジットカードでの日本円入金が可能だが、海外取引所は日本円の入金ができないため、国内取引所を経由する必要がある。
3. 海外取引所を利用するメリット
1. 取扱通貨の種類が豊富
海外取引所では、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)だけでなく、多くのアルトコインを取引することができます。例えば、Binanceでは600種類以上の仮想通貨が取引可能です。特に、新しいプロジェクトのトークンやDeFi関連のコインは海外取引所でしか購入できないことが多いです。
2. 取引手数料が安い
海外取引所の取引手数料は一般的に0.1%以下と、国内取引所よりも安価です。例えば、Binanceの手数料は基本0.1%ですが、自社トークンBNBを使用することでさらに割引を受けることができます。国内取引所の販売所ではスプレッド(売値と買値の差額)が広く、手数料が実質的に高くなるため、頻繁に取引する場合は海外取引所の方がコストを抑えられます。
3. レバレッジ取引が可能
海外取引所では、最大100倍のレバレッジ取引が可能なプラットフォームもあります。これは短期トレードで大きな利益を狙いたいトレーダーにとって魅力的な選択肢です。ただし、レバレッジ取引はリスクも大きいため、十分な知識が必要です。
4. ステーキングやDeFiサービスが充実
海外取引所では、仮想通貨を一定期間預けることで報酬を得る「ステーキング」や、分散型金融(DeFi)サービスを利用することができます。例えば、KuCoinではDeFiプロジェクトのステーキングサービスを提供しており、長期的な資産運用に適しています。
5. KYCなしで利用できる場合がある
一部の海外取引所では、本人確認(KYC)なしで取引を行うことが可能です。BybitやMEXCなどでは、KYCを行わなくても基本的な取引ができるため、手軽に利用できます。ただし、KYCをしない場合、出金制限がある場合が多いので注意が必要です。
4. 海外取引所を利用するデメリット
1. 日本の規制対象外
海外取引所は日本の金融庁の規制を受けていません。そのため、日本居住者向けのサービスが縮小される可能性があります。過去にはBinanceが日本向けサービスを停止した事例もあり、突然の規制強化によって取引が制限されるリスクがあります。
2. ハッキングリスクがある
過去には、海外取引所がハッキングされ、多額の仮想通貨が流出した事例がいくつもあります。Mt.Gox(2014年)、FTX(2022年)など、大手取引所でも資産流出が発生しています。そのため、長期保有する場合はウォレットに移すことが推奨されます。
3. 日本円の入出金ができない
海外取引所は基本的に日本円を直接入出金できません。そのため、国内取引所でビットコインやUSDTを購入し、海外取引所に送金する必要があります。この手間があるため、初心者にとってはややハードルが高いと感じるかもしれません。
5. 主要な海外取引所の比較
取引所名 | 取扱通貨数 | 手数料 | レバレッジ | 日本語対応 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
Binance | 600以上 | 0.1%以下(BNB割引あり) | 最大125倍 | △ | 世界最大の取引所、手数料が安い |
Bybit | 300以上 | 0.1%以下 | 最大100倍 | ○ | 日本語対応あり、レバレッジ取引が得意 |
KuCoin | 700以上 | 0.1%以下 | 最大100倍 | × | 草コインが豊富、ステーキングが充実 |
OKX | 500以上 | 0.08%〜 | 最大100倍 | × | 低コスト取引、NFTやDeFiサービスが豊富 |
Binance(バイナンス)
特徴
- 世界最大級の仮想通貨取引所(取引量、利用者数ともにトップクラス)
- 600種類以上の仮想通貨を取扱い
- 手数料が業界最安クラス(0.1%以下、BNB利用で割引あり)
- ステーキング・レンディング・NFTマーケットなどサービスが充実
- 高い流動性でスムーズな取引が可能
- 先物・レバレッジ取引(最大125倍)も対応
- モバイルアプリが使いやすい
デメリット
- 日本の金融庁の規制により、日本居住者向けのサービスが制限される可能性あり
- 2021年以降、日本語サポートが縮小(基本的に英語対応)
➡ おすすめの利用者:
「取引手数料を安くしたい」「多くの仮想通貨を取引したい」「ステーキングやDeFi運用もしたい」人向け。
Bybit(バイビット)
特徴
- レバレッジ取引に強みがある(最大100倍)
- 日本語対応が充実(日本語サイト・カスタマーサポートあり)
- 取引手数料が安い(0.1%以下)
- デリバティブ取引が豊富(先物・オプション取引あり)
- KYCなしでも一定の取引が可能
- 使いやすいインターフェースで初心者にも優しい
デメリット
- 取扱通貨数は約300種類でBinanceより少なめ
- 日本円の入出金が不可(USDT経由で入金が必要)
➡ おすすめの利用者:
「レバレッジ取引を活用したい」「日本語サポートが必要」「KYCなしで取引したい」人向け。
KuCoin(クーコイン)
特徴
- 700種類以上の仮想通貨を取扱い
- 手数料が安い(0.1%以下)
- ステーキング・DeFiサービスが豊富
- 草コイン(マイナーなアルトコイン)も多数取引可能
- 取引量が多く流動性が高い
デメリット
- 日本語対応がない(英語・中国語などの言語のみ)
- 日本の金融庁の規制が強化される可能性あり
- KYCなしの取引は出金制限がある
➡ おすすめの利用者:
「多くのアルトコインを取引したい」「ステーキングやDeFiを活用したい」人向け。
OKX(オーケーエックス)
特徴
- 取引手数料が業界最安クラス(0.08%〜)
- 500種類以上の仮想通貨を取扱い
- デリバティブ取引が充実(先物・オプション・スワップなど)
- NFTマーケットプレイスも提供
- ウォレットアプリが優秀で、DeFiサービスと連携可能
デメリット
- 日本語対応が不十分
- 一部の国では規制の影響で取引が制限される可能性あり
- 日本円の入出金が不可
➡ おすすめの利用者:
「低コストで取引したい」「デリバティブ取引を活用したい」「NFTやDeFiにも興味がある」人向け。
6. 海外取引所の利用方法(簡単なステップ)
海外の仮想通貨取引所を利用するには、以下の手順を踏む必要があります。初心者でも簡単に利用できるように、ステップごとに解説します。
① 国内取引所で仮想通貨を購入
海外取引所では日本円の入金ができないため、まずは国内の仮想通貨取引所で **ビットコイン(BTC)やUSDT** などを購入します。おすすめの国内取引所としては、ビットフライヤーやGMOコインが挙げられます。
② 海外取引所のアカウントを作成
次に、利用したい海外取引所でアカウントを作成します。メールアドレスまたは電話番号で登録可能 ですが、安全のため2段階認証(2FA)を設定しましょう。
③ 仮想通貨を海外取引所へ送金
国内取引所で購入した仮想通貨を、海外取引所の **入金アドレス** に送金します。送金する際は、以下の点に注意してください。
- 送金する通貨の **ネットワーク(チェーン)を確認**(BTCならBitcoinチェーン、USDTならERC-20やTRC-20など)
- **送金アドレスが間違っていないか** を必ず確認(間違うと資産を失う)
- ネットワーク手数料(ガス代)が発生することを理解しておく
④ 海外取引所で仮想通貨を取引
送金が完了すると、海外取引所で仮想通貨の売買ができるようになります。現物取引 や レバレッジ取引 など、自分の目的に応じた取引を行いましょう。
⑤ 必要ならウォレットに移動
長期保有を考えている場合、海外取引所に資産を預けっぱなしにするのはリスクがあります。特に、過去に発生した **FTXの破綻事件** や **ハッキング被害** などを考えると、安全のために **ハードウェアウォレットやソフトウェアウォレットに移動** することが推奨されます。
7. まとめ
海外の仮想通貨取引所は、**多様な取扱通貨、低手数料、レバレッジ取引、ステーキング** などのメリットがあり、上級トレーダーや幅広い投資をしたい人にとって非常に魅力的です。しかし、日本の法律に準拠していない、ハッキングリスクがある、日本円の入出金ができない などのデメリットもあります。
海外取引所を利用する際は、以下の点を意識しましょう。
- 日本の取引所で仮想通貨を購入し、海外取引所に送金する必要がある
- 取引手数料が安く、多様な通貨を取引できるメリットがある
- 日本の法律外で運営されているため、規制リスクが存在する
- 長期保有する資産は取引所に置かず、ウォレットに移すのが安全
自分の投資スタイルに合わせて、国内取引所と海外取引所を上手に使い分けることが大切です。特に初心者は、最初は国内取引所で基本的な取引を学び、慣れてから海外取引所に挑戦すると良いでしょう。